2012年01月22日
アシェンデン

サマーセット・モームの『アシェンデン』を読み終えた。
おもしろい!いろんな意味で。
読書の愉しみを堪能した感じ。
この小説は、第一次世界大戦中のイギリスのスパイが主人公。
スパイ小説の元祖と言われる作品だが、作者モーム自身の実体験に基づくとある。
一次大戦当時の体験を基に1928年に書かれている。
後に、ナチの宣伝大臣ゲッペルスが、「この小説は、モーム(と大英帝国)の狡猾なスパイ活動の証拠だ!」と非難したこともあったらしい(訳者による末尾の解説)。
てことは、ゲッペルスも、この本を読んだわけだ。
結構、おもしろく読んだんじゃなかろうか?
( ゲッベルスは文学博士号を持っているし、たしか、へたくそな小説も書いている。 )
イギリスMI6の諜報員兼作家のモーム。
ジェームズ・ボンドの言わば先輩だ。
モームが、ジュネーブで各国の諜報員とスパイ合戦を繰り広げたり、はるばるシベリア鉄道経由で革命直前のロシアに飛んで、ロシアが敵国ドイツと単独講和するのを阻止しようとしたのは本当の話らしい。
モームに言わせれば、あと6ヵ月早くロシア入りしていれば、ロシアの単独講和は防げたのだそうだ。
それにしても、なんとも気宇壮大!スケールがでかい!
さらに、モームの活動範囲は、欧米にとどまらない。
1917年のロシア革命を経て、1918年に第一世界大戦が終わった後、モームは、1919年~1923年にかけて中国大陸や東南アジア諸国を旅してまわる。
その途中、日本にも立ち寄っている。その目的は、日本の軍事力を調査し、南進政策の方向性を探ることだったとされている。
してみると、この異色の作家、日本とも少なからぬ因縁があったわけだ。
世界中を飛び回る中、折に触れて訪れた南洋の島々での経験は、モームの珠玉の短編集や最高傑作『月と6ペンス』に生かされている。
それにしても、日本の小説家でスパイ兼業の人なんているだろうか??
そんな本物の行動派はいそうもない。
そもそも、まともな情報収集活動が国家としてできているかも疑わしい。
小説とは別の問題について、いろいろ考えてしまった。
タグ :アシェンデンサマーセット・モーム


